■ 読書感想96  鈴木美保「はるとなり」

明るさの中にある念の昏さ。
その昏さはあっさりとしていて、写真の中の細部に宿る。
だから写真の端々に黒が呼吸する。
張り詰めた気が写真にテンションを与え、気は念に昇りまたその緊張感は明るさを支える。
明るさは綺麗な喜びだと思う。
それは単に季節を巡る喜びというより、そのことに大気や土地と一つになる喜びが加わる。

鈴木さんに込み上げる気は、空気に寄り添おうという念によって昇華し、眼の前の世界に浸透していく。
念は八百万の神のように世界の細部に宿り、それは陰となって息づく。
陰は存在の証跡だ。
だから鈴木さんの気は確かに念に昇っている。

山が鳴り、桜が棚引くように揺れ、樹木は呼吸する。
川は流れを持ち、蓮は存在の中に柔らかな厚みを謳う。

全ては春へと続き、気が付いたら僕たちは春の只中にある。

春は既にそこにあるのだ。

 

鈴木美保「はるとなり」 /  2026年3月1日発行/  蒼穹舎