■ 読書感想06  題府基之「LOVESODY」

彼女の母性と題府くんの無垢。

淡い色彩から、喜びを帯びた桃色の期待と、少しの不安を感じます。
そしてクリアなトーンから、題府くんの理知的で明晰な透明感が垣間見えます。

ウブな題府くんの青春期。
少なからず題府くんはきっと彼女に惹かれていた。
強いセクシュアルな愛を持って、ではなく、未来の幸せの淡い道標として。

でもきっと彼は幸せに浸っていなかった。
その証拠に、写真に通底する視線と息遣いが生(なま)だから。

題府くんは自分が生(なま)であることに素直で、それを活かすことが出来る先天的な頭の良さがあった。
ずぶずぶの生(なま)の中に居続ける僕とは違った。

題府くんは生(なま)の沼から出て、僕は残った。

どちらが良いとか悪いとか、僕にはわからない。
そして僕の沼も最近生(なま)がひいた。
僕は幾分器用に歩き回れるようになった。
だからと言って今更何処かに行きたいとか思わない。

僕は静けさを手に入れたい。
ただそれだけだ。

 

題府基之「LOVESODY」  /  2012年発行  /  LITTLE BIG MAN