■ 読書感想35 深瀬昌久「RAVENS」
あの世。
この世。
あちら側とこちら側が入り乱れる、鴉の向こう側の世界。
不穏で、凶暴で、重たい、
昏くてヒリヒリする、鴉が向かう違う世界。
それは海の、風にたなびく髪の、
轟くことの、轟音の、影の、
その中にある、それを置き去りにする、
始原の世界。
個は寄り集まり和を為し、そこにはたらきが生まれる。
それを命という。
存在は刻々と変化する。
確固たる存在などないし、実体すら存在しない。
それを空(くう)という。
命は空(くう)の中にある。
鴉は、存在の真実を見抜け、と僕に言う。
深瀬昌久「RAVENS」 / MACK版2017年発行(オリジナルの蒼穹舎版「鴉」は1986年発行) / MACK