■ 読書感想02  尾仲浩二「GRASSHOPPER」

vividなカラーに幾つかの野心を感じます。
足取りは軽快に見えて呼吸は生(なま)で、重たく湿っている気がします。

写真の表面にある明るさとは裏腹に、この時期の尾仲さんは必ずしも明るかった訳ではない気がしました。
でもそれはネガティブな意味合いではなく、尾仲さんは生(せい)の只中にあり、
世界や自分自身の存在の重みを体感していたように思うのです。

2005年に写真専門学校に入学した僕は、山内道雄さんに強い衝撃を受けた一方で、
尾仲浩二さんにも静かな衝撃を受けました。
僕の風景写真の教科書は紛れもなく「GRASSHOPPER」であり、
風景とは難しいことではなく、感じることなのだと習ったのです。
そして、尾仲さんご自身の、海のエメラルドグリーンのような遠い目を見た時、
僕は風景の深淵に一歩足を踏み入れたのだと思います。

 

尾仲浩二「GRASSHOPPER」  /  2006年5月25日発行  /  冬青社