■ 読書感想09  阿部淳「黒白ノート・3」

むあっと鼻を衝く人間の匂い。
幾つもの人生が一つの世界に交錯する異界。
その異界は幾通りもの自分以外の人生の可能性を孕み、
人生は人それぞれなのだとという当たり前の事実を僕に伝える。
もっと言えば、大きな人生の流れのほとりで僕たちはそれぞれ異なる位相で生活し、
つまり、人生は大河で、僕たちはそれぞれに人生を持つというより、
1本の大きな大河に群生する小さな存在なのだと清々しく思い当たる。

阿部淳のスナップはその河を写すことで、幾重にも交錯する異界を捉えることに成功している。

スナップとは   一本しかない河   を写すことなのではないだろうか。

 

阿部淳「黒白ノート・3」  /  2021年5月11日発行  /  VACUUM PRESS