■ 読書感想11  松本真理「わたしのくに」

伸びやかな写真。
被写体への静かな共感。
人の呼吸を生かすスナップ。

松本さんの目は自分ではなく世界に向いている。
自分との格闘に興味はなく、そんなところでのあれこれはとうに済ませ、
松本さんは踊るようなカメラワークで、世界と遊ぶ。
そして特筆すべきは彼女は自分の力に無自覚な点だ。

松本さんは天才かもしれない。
ある人が僕に言った。
「天才って自分を作り変えた人」
何を作り変えるかというと、心技体を写真にフィットするように作り変えた上で意識を変える。
人は大抵生から死を見ている。
でもどこかのタイミングで死から生を見るようになる人が稀にいる。
死から生を見ると生が淡々としてくる。
つまり無私だ。

松本さんはそれを難なくやってのけているように思える。
「私は健やかに生きていたいだけ。ただそれだけなのよ。」

松本さんの清々しさを時々思う。

 

松本真理「わたしのくに」  /  2014年10月15日発行  /  蒼穹舎