■ 読書感想14  牛腸茂雄「SELF AND OTHERS」

牛腸茂雄の井戸の水は少し渇いていて、
でもその奥の暗がりには少し水がある。
その奥の方の水で写真を撮っているから、写真は渇いているけど、濡れている。

牛腸茂雄の心の奥の方に被写体の人達の目が波紋を作り、こだまするように牛腸茂雄に響いている。

牛腸は死が近くにあって生が淡々としている。
でも生をやめたくなくて、体の奥の水をポンプで汲み上げる。
死から生を見ながら、生から死へと生きた牛腸茂雄はきっともっと生きたかったんだろうな、と思った。

 

牛腸茂雄「SELF AND OTHERS」  /  1994年6月15日発行  /  未來社