■ 読書感想16  清水コウ「世界の入口」

闇の中に光がある。

この頃の彼女には自分で降りたこともない手付かずの闇が、心の中に しん と静かにある。
そして時折滲む自我の暗さ。
欲深さではなく、自分を否定する黒。
目を凝らしてじっと暗闇を見詰めては瞼を閉じ、祈る。
彼女の心が晴れる時の強い光は、その祈りによって発露された宗教的な光だと思う。
そして恒常的な祈りは、妖しくも絶望を彩る官能的な色となって、写真になる。

清水は暗く湿っていた。
でもどんな時も僕をやめなかった。
長崎の五島列島で教会を巡り、祈りと出会った。
僕は念が祈りに昇華される気配を目の当たりにした。

清水はいつも祈っていたと思う。

「愛」と。

 

清水コウ「世界の入口」  /  2016年2月29日発行  /  蒼穹舎