■ 読書感想18  柿崎真子「アオノニマス 廻」

風景と柿崎さんは溶け合っている。
柿崎さんは岩に溶けて、海に溶けて、砂に溶けて、水に溶ける。
風景も柿崎さんに忍び込み、彼女の中で優しく溶ける。
溶け合った二つは呼吸を合わせる。
柿崎さんの心音と吐息は草や木の営みと重なり、静かに波打ち際に寄せる。

柿崎さんの写真は創造ではない。
作ることではない、一つになることだ。

ワンネス。
柿崎さんの讃美的な声が、植物が奏でる風の中に吸い込まれて、消えた。

 

柿崎真子「アオノニマス 廻」  /  2018年6月14日発行  /  蒼穹舎