■ 読書感想21  村越としや「草をふむ音」

夜明け前、繊細な青年が昏い息を吐いている。
自我の霧雨を浴びて、青年に翳が浸食する。
時折霧が晴れて、夜明けはもうすぐそこだと自覚する。

写真専門学校2年生だった2006年、僕は初個展を控え、写真がよくわからなくなっていた。
何となく立ち寄った蒼穹舎の本屋で、手に取った写真集が「あめふり」というタイトルで、作家は村越としやさんだった。
僕と同世代の写真家が僕の遥か前を走っていた。

こんな人いるのか…。

嫉妬と畏敬の念が去来し、渦巻いた。
悔しかったけれど、それ以来村越さんは僕の憧れになった。

 

村越としや「草をふむ音」  /  2008年4月20日発行  /  蒼穹舎