■ 読書感想27  川口和之「沖縄幻視行」

深い。
そして現実から遠い。
出会ったことがないのに、知っている。

昔の出来事だから遠くて、
そして深いから実際に遠くて、
でも多分僕の中にあること。

deepでジトっと湿る、僕の中心にある存在の質感。
見え隠れするうちに、今はもうどこかに忘れて来た存在の匂い。

存在のエッセンスが黒光りしながら、
ねっとり凝固して時の風化が起こる。
存在は手の届かない距離に取り残され、怪しく屹立する。

生臭い、強い、怖い。
でも色褪せない。
どんなに遠くても
存在は何よりも重く、
どこまでも重く、
いつまでも生まれている。

 

川口和之「沖縄幻視行」  /  2015年8月6日発行  /  蒼穹舎