■ 読書感想28  原美樹子「CHANGE」

亀裂がさあっと拡がり、顔を出す生の気配。
小さな亀裂は世界のベールを捲り上げ、
生皮のままの本当の世界が踊り出る。
柔らかな表皮は風に晒され、みるみるうちに僕の中に浸透する。

異次元が僕の世界となり、僕は束の間安寧を得る。
秩序を喪うから不安定な筈なのに、
原さんの見せる異次元は優しい。

優しいからまた会いたくて、
会うともっと一緒にいたいと思う。
一緒にいたら色々なところに行きたくて、
行くと思い出が溢れる。
この時間がずっと続けば良いのにと願う頃、僕は本当の世界を終える。

自分が達観したような甘美な錯覚が少し続き、余韻が消えると僕はまたいつもの自分に戻っている。

 

原美樹子「CHANGE」  /  2016年発行  /  THE GOULD COLLECTION