■ 読書感想31  松谷友美「山の光」

重たい吐息、静かに沈んだ眼。
昏さ。
憂鬱と翳り。

でも澄んでいる。

ときめくことと昏さの乖離。
一瞬明るいのだけど、存在の重み。

沈澱と上澄み。

旅が体から離れた。

心音高い旅の中、写真を撮る。
上がってくる写真に自分で喜び、
その喜びの中に素直な自分の姿を見て来た。
写真が撮れないなんて思わない。
でも体の下の方が重い。
奥の方が重い。
感動はしてる。
でも全身ではない。

遠ざかる町は新しい写真を連れて来る。
そう思うと少しときめく。

旅の心がまた、揺れる。

 

松谷友美「山の光」  /  2020年5月18日発行  /  蒼穹舎