■ 読書感想36  柳本史歩「生活について」

カジュアルな湿度、生温かい呼吸。
湿っているようで渇いていて、
カラッとしているようで生温かい。

何も思わない。
柳本さんの粋な視線が伝わってくる。
感じるしか手立てのない写真を、
時に意識を昏く、時に軽快に、
自分の体にこびりついた自意識が揮発するかのように量産している。

考えない。
思い切りよく迷いなく押し切ったシャッターは衒いがない。
飾ろうとしないから核心に触れ、
カメラワークは真っ直ぐ確信犯で罪状まで告白している。

その独白と囁きは独りよがりではない。
夏の日差しと錯覚するくらい僕の目を刺激する。

あっけらかんとした自意識。
敢えて消さない、敢えて自由になろうと試みない、堪らずそこにある呼吸の化石。

 

柳本史歩「生活について」  /  2013年12月6日発行  /  蒼穹舎