■ 読書感想37  藤岡亜弥「さよならを教えて」

寂しさを少しだけ楽しんでいて、
憂鬱だけど清々しい。

陽の光がキラキラ輝いているから、
それが傷を中和して、寂しさが通り過ぎていくのを歌を口ずさむように待っている。

楽しいだけじゃないし、
明るいだけじゃない。
昏さは引き摺っているし、
傷みも抱えている。
でも過ぎ去るのだ。

自分勝手は否めない。
でも夜明けの予感は強く、
後ろ髪引かれながら自然と前を向く。

傷を感じている方が楽だけど、
そこから這い出る意志を持ち始めた。
もうすぐ憂鬱を突破する。

遠くの方で雨が止んだ。
今必要なのは光だけとは限らない。

 

藤岡亜弥「さよならを教えて」  /  2004年11月1日発行  /  ビジュアルアーツ