■ 読書感想45  成合明彦「宍道湖風景」

生な湿度、
神話的な光、
湖の轟き、
舟、舟、舟。

空気の宇宙的な静謐、
風の早鐘。

息を詰めて、時に深い息を吐いて、
湖の水面に似て、それに合わせて、
成合さんの呼吸はある。
愁しみが光の中にあって、
寂しさと成合さんの明るさの壮年が枯れ始めている。

その日その日を生きることに喜びがある。
普通で当たり前のことを愛しいと思う。
写真は、例えば僕と世界の関係であり、
成合さんと世界の関係で、
だから成合さんの宍道湖風景は成合さんの空間だと思う。
その空間に静かな切実さがあって、
例えば写っている花が僕に響いて、
僕は思うのだ。

朝が来ることが幸せだ。
そしてそこに一輪の花が咲いていたら、
僕は幸せだ、と。

 

成合明彦「宍道湖風景」  /  2018年3月18日発行  /  蒼穹舎