■ 読書感想46  山崎弘義「CROSSROAD」

軽快なカメラワーク。
頑なで湿度の強い気質。

躰の奥の方で自意識が揺蕩い、表出する自我は人工の光で揮発する。

heavyでliteな山崎さんの体質は、
業の深さを抱えながら迷いがない写真たちと、重なった。

輪郭が立ち、カルマは燃えて、雑踏の人々はソリッドに削がれる。
夢中で撮りながら、自問自答する哲学。
絞るように導かれた答えは、
無駄が消されあっけらかんと、怕い。

人間には匂いがある。
獣とは違う、もっと生々しい匂い。
人は惑い、罪を重ね、浄化し、生きている。
贖罪する時、人は匂う。
煩悩が燃えるから。
腐敗する匂いは悍ましく、愛しい。

雑踏の出会い頭、山崎さんは焚いている。
人間の匂いを讃えながら。

 

山崎弘義「CROSSROAD」  /  2019年10月10日発行  /  蒼穹舎