■ 読書感想56  須田一政「現代東京図絵」

必ず目の焦点が何かに合う。
そしてその写真がどうして写真として成立しているか瞬時に悟る。

何かの出来事があり、それを起こした当事者の動機を探る時、
その当事者が出来事のあらましを話す最中に、何故その行為を成したか、その動機がピンと来てしまう様に、
須田さんの写真には、須田さんの捉えた世界の全体像とその動機が写されている。

ぼんやり見え始めた像の全体を解釈すると同時に、その動機も腑に落ちるのだ。

これはスナップだと思う。

僕は街に出かける。
とりわけ人を撮る。
人にはそれぞれ人生があり、
全ての人がその人生のあるタイミングを生きていて、
そしてそれは僕も全く同じで、
擦れ違う人擦れ違う人、僕はその人の何かを決定的に掴み、消化して、忘れる。
でも忘れる瞬間、僕は人に対していつもある同じ感慨を持つ。
それは、人間なんてそれほど大仰なものではない、という感覚で、
それはその人の生命存在の強度と方向性と結び付き、
僕を堪らなく愛おしくさせる。

これはスナップだと思う。

須田さんは誰よりも力強く、厚く、太く、
その作業をこなしているように見える。

須田さんの才能は天性のものだ。
ページを捲る度に、僕に撮れるのだろうか?と自問している自分に気づく。
答えは歴然で、
僕には撮れない、分かりきっている。

写真集を閉じて初めて悔しいと思った。

 

須田一政「現代東京図絵」  /  2020年3月26日発行  /  禅フォトギャラリー