■ 読書感想60  本山周平「日本 2010-2020」

本気と喜び。
明晰な理性。
素朴な静けさ、気軽な明るさ。

本山さんは本気で写真に取り組むと決めているのかもしれない。
本気で取り組むと決めてから 一呼吸 それではゆっくりやろうか、と旅を続ける、
それが喜びなのかもしれない。

シリアスだけどシリアスを解くカメラワーク。
カジュアルの体をなしながら、本気の信念が垣間見える。

モノクロの黒の中に黄色いエネルギーを感じ取る。
風景を支える事実に気付いた時の光明。

本山さんは社会が用意した椅子に座る器量もあり、
自分で用意した椅子に座る求道的な姿勢もある。
社会の椅子に座るにはマジョリティのコンセンサスが必要だけど、
自分の椅子は覚悟が要る。
社会の椅子の行く先は社会的な成功で、自分の椅子の行く先は、光。

他者との比較も競争もない、
ただただ自分の直観と五感が頼りだ。
ポジティブもネガティブも等価に、絶えず写真体験を繰り返し、方向を失いながら明かりさえない道を独り、歩む。
無力に失意し、無力のまま歩む絶望の最中、頭でもない、抑揚する心でもなく、みぞおち近くお腹の真ん中に芽生える信号に耳を傾ける。

その時、光は訪れる。

無力だから失意した。
でも無力のまま歩かねばならぬ絶望。
その真っ暗闇の向こうに 光 はある。

本山さんはどちらの椅子に座るだろう?

そう思いながら、再び本のページを捲る。
優しい光が目に飛び込む。

僕は椅子を分けてないよ

気負う僕に写真が笑った気がした。

 

本山周平「日本 2010-2020」  /  2021年1月1日発行  /  蒼穹舎