■ 読書感想67  石川武志「NAKED CITY VARANASI」

生臭い野生と生木のような硬さ。
人を焼く火と燃える人体。
奇形の人のなりふり構わない挑むような目と、物乞いの人の諭しながら負けている目。
鳥は無骨な羽音を立て、死を待つ人は何故泣いているのだろう?
全てを風土と火が包み、無造作に突き出た両足は、物体に魂があったことを指し示す。
こちら側にある死、阿鼻叫喚す。

サドゥも聖俗入り乱れ、高尚も下衆も人間は全てをひっくるみ、
ごった返し、煮詰められ、グツグツとした炎に焼かれる迄、体液に塗れる。

善悪も正誤もないただ経験にのみ身を委ね、欲に溺れ、人間を謳い、人骨になる。

鳥が騒ぐ河の中で、出来れば僕も圧倒的な無名性を獲得しながら、沈んで一粒の砂に還りたい。

やがて魂が光に溢れる時、
僕は僕を終えるだろう。

 

石川武志「NAKED CITY VARANASI」  /  2020年8月20日発行  /  蒼穹舎