■ 読書感想71 山内道雄「こども」
寄ろうとは思っていると思う。
レンズを覗いたまま接近しているのかもしれない。
森の中でおもむろに生えているキノコのように存在が強い子ども達。
バランスは壊され、破れた秩序からニョキっと顔を出す都市のキノコ。
手付かずのキノコは無垢なまま晒され、焚かれ、柔らかな肉の生臭さを表皮に包まれ、姿を露呈する。
山内さんはあらゆる自意識から自由で、
スーッと真っ直ぐ存在と繋がってしまう稀有な人だ。
意識という秩序が混乱し、
山内さんの世界は最早向こう側だ。
脳の作るルールを突破したのだから、
侵犯した向こうは宇宙だ。
写真の四辺は意識だ。
でもその意識から自由なのだからキノコたちは際限なく胎動する。
どうしたらこんなことが可能なのか?
多分山内さんの目はそれしか見えない盲目なのではなく、
それだけを見てる晴眼なのだ。
子どもしか見えないのではなく、
子どもだけを見てるのだ。
でもどうして子どもなのだろう?
多分山内さんは子どもという存在のその在り方に共感しているのだ。
きっと山内さんは子どもたちに似ているのだろう。
山内さんは脳で生きる大人より、
都市に群生するキノコたちと共通言語を持つ。
子どもは山内さんで、山内さんは夢中なのだ。
山内道雄「こども」 / 2021年1月10日発行 / 蒼穹舎