■ 読書感想75 吉野英理香「JUST LIKE ON THE RADIO ラジオのように」
重たさの周辺が明るい。
鈍器のような重さと鮮烈な明るさ。
この重たさは視線の強度だと思う。
明るさは野性の程度。
吉野さんは多分、目眩む経験を積んだ動物なんだと思う。
生臭い呼吸の生温かい温度。
鉛のような視線の鋭い光。
そして淡く立ち込める吉野さんがそこにいる気配の余韻。
意味から自由な写真の並びに心地よさを覚え、ページを捲る度にドキドキした。
あっという間に本が終わり、また最初からページを開く。
ページを捲る度にドキドキしたのは、凄い人に出会いたいけど出会いたくない僕の気質に依るものだ。
凄い人だったらどうしよう…。
本が終わる迄の間ずっとそう思っている。
感動したい気持ちと負けたくない気持ち。
でも僕は僕で他者は他者だから、という理由で僕は感動にシフトウェイトする。
気持ちの落とし所が決まり、作品が落ち着く所にスポッとはまる。
心の中で水晶のように光る写真たちは、吉野さんの力そのものとして僕の暗がりを照らす。
トータルな写真力は罪を浄化する。
吉野英理香「JUST LIKE ON THE RADIO ラジオのように」 / 2011年3月10日発行 / OSIRIS