■ 読書感想80  村上雄大「夏草の路」

夜明け前のまだ青になる前の青。
熟れる前の青。
思春期の声にならない声、まだ始まらない声。

色が始まった。
芽吹く高鳴りと色づく空気。
エネルギーは飽和を呈し、やがて赤く焼ける。

樹々は実をつける。
枯れ方は鮮やかだ。
真っ最中は峠を越え、赤く焼けた色彩は黄色く爛れ、華やかさは痕跡だけ残し、どこかに消えた。

終わりは終わり、始まりは始まる。

夜明けは霧を孕み、靄の向こうはもうすぐ明るい。

 

村上雄大「夏草の路」  /  2018年1月1日発行  /  蒼穹舎