■ 読書感想89  鈴木信彦「TOKYO HEAT WAVE」

寂しさの本質が昏くて強い。
自分を確認したいのだと思う。

辺りは喧騒でも、鈴木さんの世界は静謐を帯びる。音を追いやり、自分だけの世界に入り込むとそこには喜びがある。
何故喜びがあるか?
それは被写体の人たちが自分を照らしてくれるから。

鈴木さんは見る、見つめ返して貰う為に。
鈴木さんは彷徨う、渋谷という寂しさに終わりのない街を。
僕は誰なんだろう?その問いかけは永遠性を持ってこれを書く僕に響く。

あなたは誰で 僕は誰ですか?

消えていた世界の音がまた戻る。
鈴木さんが視線を投げかけた人たちの目にも鈴木さんは映っている。
誰かが誰かを呼ぶ声がした。
その谺(こだま)は僕の耳にも届いていた。

 

鈴木信彦「TOKYO HEAT WAVE」  /  2025年3月3日第2刷発行/  蒼穹舎